インプラントは「第2の永久歯」といわれることもあり、失った歯をもとの天然の歯に近い状態に回復できる治療法です。固定式で取り外す必要もなく見た目も良いといったメリットが多い方法ですが、もちろんデメリットもあります。
あなたが、もし歯を失ってしまったとき(歯を抜いた、抜歯)、その後インプラントにするかどうか悩むことがあるかもしれません。そのインプラントのメリット、デメリットの「答え」を解説いたします。
目次
そもそも歯をお入れする方法は何種類あるのか?
歯が無い所に歯をお入れする方法としては4つあります。
①入れ歯
○メリット
治療期間、回数も最短でお入れすることができます。お体に負担も少なく、健康状態に左右されずに治療をおこなうことができます。さらに、歯を削ることもありません。
健康保険内で制作、健康保険外(自由診療)で制作、の2つの方法がありますが、健康保険内の治療の中では費用はもっとも少ないタイプになります。
※治療回数は(設計、材料により異なりますが)最短2回の通院で入れ歯が入ることがあります。
△デメリット
取り外し式のため、噛む力も弱く、異物感が出る場合があります。
ガム、飴などの粘着性のある食べ物は苦手で、かむ力は固定式のものと比較すると1/7~1/9となるため、いままで食べられたものが食べにくくなることがあります。
②ブリッジ
○メリット
異物感も少なく、固定式で、見た目や噛みあわせも天然歯に近い状態で治療が可能です。
△デメリット
土台となる歯を削る必要が出てきます。また、土台の歯に噛みあわせの負担が強く掛かるため、長期間の使用で歯が折れたり割れたりする可能性が残ります。
失った歯の本数(抜いた歯の本数)が複数の場合(2本以上)はできない場合があります。
健康保険内で制作、健康保険外(自由診療)で制作、の2つの方法があり、①設計(本数、構造、等)方法②使用材料の違い、などで変わってきます。
③インプラント
○メリット
異物感も少なく、固定式で、見た目や噛みあわせも天然歯に近い状態で治療が可能です。ブリッジと違い土台となる歯を削る必要がありません。
△デメリット
外科手術になるため多少なりともお体にご負担がかかります。また、お体の健康状態で制限されることがあり、治療期間(4ヶ月~1年)も長くなります。
健康保険外の治療になるため費用の負担もあります。
また、特に重要なポイントはインプラントは歯周病になってしまうと天然の歯より進みやすい点です。
④歯の移植(親知らずなど、自家歯牙移植)
○メリット
ご自身の余っている天然の歯(親知らず、等)を使用できる点です。天然の歯と同じように使用が可能になります。
△デメリット
移植する「もと」となる歯(親知らず、等)がないと治療ができない点です。もしあったとしても歯が大きすぎたり(歯茎の骨に入りきらないため)した場合もできません。
外科手術になるため多少なりともお体にご負担がかかります。また、お体の健康状態などによってはできない場合があります。
成功率はインプラントなどの手術と比較するとやや低くなります(インプラント:約95%、自家歯牙移植:約85%)
以上の4つが歯をお入れする方法になります。さらに5つ目の選択肢としては・・・
⑤あえて何も入れない
場合によっては「何も入れず経過をみていく」という選択もあります(「短縮歯列」と言います)。
○メリット
治療そのものをおこなわないため、治療期間や費用がかからない。
△デメリット
残っている歯の本数が十分にある(最低20本以上)ことが前提になります。食事がとりづらくなる場合があり、歯が移動(出てきたり、倒れたり)することもありあます。
もちろん残っている歯の負担が大きくなるため、トラブル(折れる、等)がおきる可能性は残ります。
インプラントのメリットとデメリット
インプラントのメリット
①固定式であり良く咬める
固定式で取り外す必要がなく、特に苦手とする食べ物もありません。
②歯を削らないで済む
ブリッジと比べての一番大きなメリットは両脇の土台の歯を削る必要がない点になります。歯を削らずに治療ができれば理想的な治療に近づきます。
③見た目が天然の歯に近い
①入れ歯と違い歯にかかる「バネ」がなく固定式であり②ブリッジと比べ構造上天然の歯に一番近いため見た目が天然の歯に一番近い状態で治療ができます。
※見た目に関しては、歯茎の骨や歯肉部分の厚みや量が大きく影響するため事前に説明を受けると良いでしょう。
④異物感が少ない
天然の歯に近い構造のため異物感が少なく、話しやすくなります。また、どうしても入れ歯(義歯)が合わない方には選択肢の候補の一つになります。できるだけ天然の歯と同じように使用したい方には向いています。
お話しする機会や歌を歌うことが多い場合は有力候補となります。
インプラントのデメリット
①外科手術が必要である
インプラントはもちろん外科手術になりますので、お体に少なからず負担がかかります。また、お体の健康状態や飲まれているお薬によっては手術ができない場合があります。
歯茎の骨が少ない場合は骨の移植などをして増やす場合もあり、治療行程が増える場合があります。
②費用の点
税制上で「医療費控除」の対象(10万円を超えた部分)になるものの、デメリットとしては保険外の治療になるため費用がかかる点です。
③治療期間がかかる
インプラントの一回目の手術をしてから歯が入るまで、おおよそ5ヶ月~1年(複雑なケースの場合)が考えられます。
歯茎の骨が少ない場合は骨の移植などをして増やす場合もあり、治療行程、期間がさらに増える場合があります。
※抜歯と同時におこなう「即時埋入法(そくじまいにゅうほう)」、手術の回数を少なくする「1回法(2回法もあるため)」、などで治療期間を短くできる場合もあります。
④歯周病になると進みやすい
もちろん、インプラントを生涯トラブルなく使用していくことが理想ですが、
インプラントは「いったん歯周病(歯槽膿漏)になってしまうと天然の歯より進みやすい」という特徴があるため、
インプラントの治療をおこなう前にしっかりと歯周病の治療を終わらせておく必要があり、インプラントの治療後も歯周病を防ぐための
継続的な管理(メインテナンス)が必ず必要になります。
「治療が終わった→歯科に行かなくなる」となってしまうとトラブルがいつ起きても不思議ではありません。
※いままで歯周病が原因で歯を失った(抜歯した)ご経験がある方は特に注意が必要です(歯周病になりやすい可能性があるため)。
結局どうすればよいのか?
もちろん、インプラントが可能かどうかは
①お口の状況(歯茎の骨の厚みや量など)と
②お体の健康状態(糖尿病などの全身疾患の有無、飲まれている薬の種類)
で決まりますが、それ以外の比較検討のポイントをご紹介したいと思います。
【ポイント1】何年使用したいか
インプラントをおこなうこと=治療後も通院する(継続的な管理が必要のため)+日常のお手入れレベルの維持、になります。
年代により、歩いて通院ができなくなったり、ご自身でお手入れできなくなる状態(認知症、寝たきり、等)の可能性もゼロではありません。
その時どうするのか?将来的にあと何年間使用できれば納得できるのか?など考えることも必要でしょう。
【ポイント2】健康状態を確認
糖尿病だが血糖値がなかなか下がらない、血液を流れを良くする薬を飲んでいる(高血圧、心臓病、脳梗塞、等)、腎臓病、喫煙、などインプラント手術にマイナスになることがある場合は無理をせず治療方法の変更(入れ歯、ブリッジ、等)も検討する必要もあります。
【ポイント3】若年者の場合
じつは天然の歯は「僅かに動きます(0.02~0.05㎜)」。
インプラントは 「全く動きません(0㎜)」。
骨の成長が終了していない若年者(20歳未満)が行うと、数年後に天然の歯と隙間ができてきたり、高さが違ってくる場合があります(天然の歯が動くため)、そのため骨の成長が止まってから行うことが推奨されます。
まだまだ身長が伸びているような時期の場合は一時的に「仮歯」や「入れ歯」を入れながら治療のタイミングを待つこともあります。
【ポイント4】引っ越し、移動、などの予定が予測できる場合
インプラント治療が終了してもその後の定期的な通院が必ず必要になります。
また治療の途中で中止することも極めて困難なため、お引っ越しや転勤の可能性がある場合はいったん見送るか、もしくは他の治療法を考えるなどの配慮が必要になります。
【ポイント5】毎日のお手入れが十分にできるか?
どなたもインプラントを快適に長くご使用したいと考えると思います。そのためには日常のお手入れが不可欠になります。
インプラントは天然の歯より歯周病が進みやすいため、十分なお手入れができていないとトラブル発生の原因となります。
十分なお手入れが身に付いてないのに、無理をしてインプラントすることはお勧めできません。どうしてもお手入れができない場合は他の治療法も考える慎重さが必要です。
まとめ
・インプラントはあくまで治療法の選択肢の一つなので他の方法と比較検討すると良い。
・インプラントはメリットの多い治療ではあるが、「すべての方にあてはまる」訳ではない。
・多くは、ご希望とお口の状況でベストな選択が決まる。
・年齢、ライフスタイル、健康状態、も配慮に入れる。
・歯を入れて終わりでなく、その先まで考えて治療をすることが大切。