骨粗しょう症の方が歯の治療を受ける時の5つの注意点

 

骨粗しょう症と歯の治療の関係と注意点と対処法まとめ粗しょう症(骨粗鬆症)の方が歯の治療をおこない、あごの骨が腐る「顎骨壊死(がっこつえし)」を発症するケースが年々増えてきています。一度なってしまうと治りにくいため長期化して日常生活に大きく支障がでてきます。

医科クリニックの83.3%が骨粗しょう症の診療、治療をおこなっており、①過去に太ももの骨や背骨の骨折の経験がある②骨密度の低下、などのガイドラインを参考にしながら治療をおこなっています。

「なぜ注意しないといけないのか?」の「答え」を知ってトラブルを未然に防ぎ、あなたの健康を維持しましょう。

なぜ注意が必要なのか?

2003年に骨粗しょう症の方が歯の治療をした際に、骨隨炎(骨の炎症)、顎骨壊死(あごの骨がくさる)ケースが報告されたのをきっかけに、特に抜歯、インプラント、などの治療に際して注意 が必要と言われ始めました。

特に骨を強くする(骨折予防のため)お薬で良く使用されているビスホスホネートを飲まれている方におきるものを「ビスホスホネート関連顎骨壊死(がっこつえし)」と呼ばれ、発生頻度は低いものの通常の骨髄炎と比較すると治りにくい(長期化する)ため特に注意が必要になります。

日本は長寿社会なので、骨折予防のためのお薬を飲まれている高齢者の方が多くなってきています。また、がんの治療にも骨吸収抑制薬を使用することがあります(注射薬)。

骨粗しょう症とは?

骨粗しょう症の薬の見本(ベネット、アクトネル、ボナロン)

ベネット、アクトネル、ボナロン

一言でいうと「骨がもろくなる」という状態になりますが、もう少し正確にいうと「骨量の減少、骨質の劣化」がおこり骨折しやすい状態をいいます。

日本国内で骨粗しょう症の方は1300万人いるといわれ(2015年日本骨粗鬆学会推計)ており、「日本人11人に1人は骨粗しょう症」の計算になります。

治療をおこなう場合は整形外科でおこなうことが多くなります。

骨を強くし、骨折しにくくするために、ビスホスホネート(BP製剤(※)、ビーピーせいざい)を使用することが多く、良い薬(効果が高く、副作用が少ない)でありますが同時並行して歯の治療をおこなう場合は注意が必要です。

※BP製剤を服用されている方は約200万人と推定されてます。

※BP製剤 ⇒リセドロネート(商品名:ベネット、アクトネル、ボナロン)、 ゾレドロネート(商品名:ゾメタ)、をはじめ多数ある。

※BP(ビスホスホネート):1885年にドイツで合成される。当時は水道管の水垢防止剤として使用。骨粗しょう症の治療では1990年より使用開始。

※骨は固定しているわけでなく絶えず入れ替わっていて、活性化 ⇒ 骨吸収 ⇒ 逆転 ⇒ 骨形成 ⇒ 休止 で代謝している。そのサイクルの中の「 骨吸収」の役割を果たす「破骨細胞(はこつさいぼう)」を自然死させ骨吸収を抑制するのがBP製剤。

 

どのくらいの確率でトラブル(顎骨壊死)がでるのか?

ではどのくらいの割合で骨髄壊死がおきるのでしょうか?

(国内)骨粗しょう症の薬の使用者で顎骨壊死発生頻度の表

飲み薬の場合の発生頻度は大きくない

日本国内での発生頻度は、 薬の使用法で違いがあり、飲み薬では0.01~0.02%、注射薬での場合では頻度が上がり1~2%、となります。お薬使用者のうち最小で1万人~最大で50人に1人まで差があります。

飲み薬の場合はきわめて発生頻度は小さいことがわかります。

ただし、注射薬での使用している場合は100倍なりやすくなるという点は注目すべき点です。

 

骨粗しょう症の薬の使い方の違いで顎骨壊死の発生割合の表

BP製剤+抜歯⇒頻度が大きくなる傾向がわかる

歯科治療した場合(抜歯)した場合の顎骨壊死はどれくらいおきるのでしょうか?

歯科で外科処置である抜歯した場合は、薬を飲んでいる方0.5%以下、薬を注射している方1.6~14.8%となり、

抜歯をおこなった場合

お薬を飲んでいる方 0.01~0.02%⇒0.5%に上昇(200人に1人)

注射で使用している方 1~2%⇒1.6~14.8%に上昇(63人に1人~7人に1人)

となり、BP製剤(注射)+ 抜歯 となると最大7人に1人が抜歯後のトラブル(顎骨壊死)になる計算になります。

近年(2016年)では他の種類の薬でもおきることがわかってきて、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(こつきゅうしゅうよくせいやくかんれんがっこつえし、ARONJ)とまとめて呼ばれています。

定義としては
①BP製剤、デノスマブ(※)による治療歴(服用薬、注射薬)があり、
②放射線治療はしていない、がん転移でもない、
③8週間以上持続して骨が露出している、
以上の3つにあてはまるものを「ARONJ」としています。

※デノスマブ(商品名:プラリア)⇒骨粗しょう症、がんの治療薬

どんな歯科治療がきっかけになるのか?

抜歯以外に、顎骨壊死のきっかけになる歯科治療はどんなものがあるのでしょうか?

顎骨壊死のきっかけになった歯科治療の割合のグラフ

どんな歯科治療がきっかけになるのか?

やはり抜歯が断トツで62%となり、その他の外科処置、インプラントなどの外科処置関連で7割を占めることがわかります。

注目する点は、自然に発生したり、歯周病、入れ歯の不適合など通常の歯科治療でも起きるところです。歯を抜かない場合でも油断は禁物と言えます。

【顎骨壊死のきっかけとなった歯の治療】

抜歯      62%
インプラント   4%
外科処置     7%
(以上3つは外科処置、計73%)

入れ歯が合わない 7%
自然発症    15%
歯周疾患による  5%
(以上3つは自然発症と通常歯科治療)

以上合計 100%

ではどうすればよいのか?

ではBP製剤を使用している方は歯の治療のときにどうすれば良いのか?

 ①歯科の先生に「骨を強くする薬を飲んでいる」など報告をする

初めての受診時には「通っている医科クリニック」「飲んでいるお薬」など聞かれるかと思いますが、通院途中 から、お薬を飲み始めた場合、担当の先生もわかりませんのでその際は担当の歯科医師に速やかに報告することが必要です。

「知らないまま抜歯」などにならないように。

 ②外科処置はできるだけ避ける

骨に触れる処置はできるだけ避けることが賢明です。骨を触るような外科処置は慎重になる必要があります。

例)・抜歯するかの判断は慎重にする。

・歯周病治療であれば→再生療法、など

・歯の根の治療であれば→歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)、など

・インプラントの埋入、など

以上の処置は見送るか、担当の歯科医師と十分な相談が必要と考えます。

 ③お口の中を清潔に保つ(細菌量を減らす)

骨の代謝をサイクルが通常と違うため、骨の細菌への抵抗力が変わります。極力お口の中を清潔にして細菌量を減らしましょう。

放置されている虫歯があったり、歯周病が進んでいる場合はお口の中の細菌量が増加傾向になるためしっかり治療を終了させ、専門的なお手入れの指導なども受けるとことが良いと考えます。

 ④入れ歯はフィットの良いものにする(あたる場所から傷ができるため)

傷ができる→骨が露出する、ことがあります。骨が露出すると細菌感染の原因になるため、入れ歯があたる部位は調整してもらうか、フィットの良い入れ歯にする、などの 対応をしましょう。

 ⑤4年以上お薬を使用している方は特に注意

4年以上BP製剤を服用している場合、顎骨壊死の発生率が4倍(0.051→0.210%)に急上昇することがわかっています。 長く使用していると骨の中のお薬の蓄積量も多くなります。

4年以上お薬を使用している方が歯の治療をおこなう場合は、特に慎重におこなう必要があります。

まとめ

・骨粗しょう症でお薬を使用している場合は担当の歯科医師に必ず報告する。
 特に長くお薬を使用している場合、注射で使用している場合は要注意。

・飲み薬だけの場合、抜歯をおこなってもトラブルの頻度は小さい。ただし油断は禁物。

・通常の歯の治療は問題ないが、外科治療はなるべくおこなわないことが賢明(もしくは要相談)。

・お口の中の細菌の量を減らすため、歯周病治療(外科処置を伴わない範囲での)は有効。

・入れ歯の傷から骨壊死が起きる場合があるので入れ歯はフィットの良いものを。

 

【参考文献】

・日本歯科医師会雑誌 2017年1月号

・全国保険医新聞   2017年1~7月号、11月号

・日本口腔インプラント学会誌 vol. 30 No.3

・日本骨粗鬆症学会ガイドライン

 

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