「あの人は歯を磨かないのに歯が丈夫」「私は歯も磨いているし、歯医者さんにもちゃんと行っているが歯が弱い」などと思ったことはありませんか?
その疑問に「お答え」いたします。
目次
生まれつき歯周病になりやすい人はいるのか?
答えは「YES」です。下の画像をご覧ください、
1986年に発表された論文ですが、歯周病に関して、「急速に進みやすい人(歯が弱い人)」が8%、その逆に「ほとんど進まない人(歯が強い人)」が11%、の割合で存在するとの研究データがあります。
残りの81%の方は「ゆっくり進む(平均的な人)」ということで大半の方はここにあてはまります。
※これは、「歯磨きの習慣がそもそも無く」「歯の治療も一切受けない(歯科クリニックが無い)」スリランカの茶畑で働く方を対象にした研究から分かったことです。
先進国の米国でも同様な研究があり、同じような結果がでています。
この米国の研究の場合は、治療しているのにもかかわらず急速に歯を失う方が5%ほどいて、それとは対照的に治療した83%の方はほぼ歯を失わないで経過しているという調査結果になっています(その他の方は若干歯を失った)。
要するに「歯周病の進行には個人差がある」ということがわかった訳です。
その理由は?
では、歯周病の進行に個人差があることは分かりました。その理由はどこにあるのでしょうか?
答えは体の「免疫反応の差」にあります。
例えば、「風邪をひきやすい人、そうでない人」がいるように、細菌などの攻撃に対しての弱い、強い(炎症反応が 出やすい or 出にくい)の体質の差が分かりやすい例になります。
※免疫反応というと難しく聞こえますが、簡単にいうと外部の刺激(細菌など)に対して「腫れやすい or 腫れにくい」の体の反応と考えると分かりやすいかもしれません。
歯周病に関しては、
歯周病菌が毒素を出す → 毒素に対する体の反応(炎症) → 破骨細胞(骨を溶かす細胞)が過敏に反応 →歯ぐきの骨が溶ける(痩せる)
のメカニズムで進み、実際には
歯を支える歯ぐきの骨が溶ける、歯ぐきが腫れる → 歯が「グラグラ」してくる → 最終的には「歯が抜ける」
以上のような流れで歯を失っていきます。
具体的なイメージは?
具体的なイメージとしては「歯周病の治療をしているのにもかかわらず良くならない」「以前、歯周病の治療をしたがまた悪くなってきた」などがご自身でわかる感触だと思います。
ただし、誤解してはいけないポイントは、歯周病に影響する因子は多くあるので単純に
「歯周病が良くならないのは、すべて体質の影響」ではないということです。
例えば、8割を占める「ゆっくり歯周病が進行」するタイプの方でも、「喫煙」「お手入れ不足」があれば歯周病は急速に進むこともありますし、
逆に1割以下の「急速に歯周病が進行」するタイプの方でも「きっちり治療をする」ことにより歯周病の進行が止まる(or ゆっくり)になります。
どうすればよいのか?
もし、あなたが「急速に歯周病が進む」タイプであったらではどうすればよいのでしょうか?
答えは、「きっちり(専門的に)と歯周病の治療をすること」になります。
おそらく「すでに歯周病の治療はしています」との方も多いと思いますが、ポイントはその「治療内容」にあります。以下「きっちり治療する場合のポイント」をご紹介いたします。
□ お口の写真(カラー写真)をとっているか? (治療をして良くなったかどうか治療前と比較できないといけない)
□ 10~14枚のレントゲンを撮っているか? (大きなレントゲンだけだと見逃しが多くなる)
□ 歯周精密検査をおこなっているか?(簡易的な検査でなく、歯周ポケット6点法、出血部位、歯の根の形態、動揺度、も測定)
□ 歯ぐきの中の歯石を取っているか?(歯の表面の歯石だけでは不十分、場合により麻酔をして取ることもあります)
□ 唾液検査(や細菌検査)などをおこなっているか?
□ 1人ひとりの歯周病のリスク因子(喫煙、全身疾患、等)がいくつあるか把握しているか?
□ 国家資格がある歯科衛生士が口腔衛生指導をおこなっているか?
□ 1回の治療時間を十分(30~60分)にかけておこなっているか?
□ ブラッシング指導に十分時間をかけているか? (一番大切な治療のため)
□ 治療後も継続的な管理をおこなっているか? (再発防止ののため)
他にもまだありますが、「きっちり(専門的に)歯周病の治療する場合」は以上の治療内容が必要となります。
まとめ
・歯周病の進行には個人差がある(免疫反応の差)。
・約80%はゆっくり歯周病が進むタイプである。
・急速に歯周病が進むタイプでも治療により停止(or ゆっくり)になる。
★歯周病についてもう少し詳しく知りたい方はこちらをクリック→「歯周病とは?」
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(参考文献)
LION Dent.File vol41
J Clin.Periodontol. 1986;13:431-440.
J.Periodontol.1978;49(5):225-237.