歯が原因で蓄膿症(慢性副鼻腔炎、上顎洞炎)になる場合があります。その場合の原因と治療方法についての「答え」です。
目次
歯が原因の蓄膿症って?
【登場人物のご紹介】
患者さんのよくある疑問、質問の代弁者。好奇心旺盛で理解が早い。
東京大手町にある大手町デンタルクリニックの院長。このHPの執筆者。
2015年 日本の歯科100選に選ばれる。
FAQ子
友人が鼻づまりがなかなか治らなくて耳鼻科さんにいったら、歯からくる蓄膿症(慢性副鼻腔炎、上顎洞炎)の疑いがあるので歯科で診てもらって下さいと言われたらしいのですが、 そういうことってあるのでしょうか?
Dr.島倉
あります。 正式な呼び名は「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」といって歯が原因でおきる蓄膿症(慢性副鼻腔炎)の一つです。
FAQ子
歯と鼻は関係なさそうですが...
Dr.島倉
おっしゃる通り、 通常は関係ないのですが上の奥歯(奥から1~4番目の歯)の根の先が鼻の穴(副鼻腔、上顎洞)に近い方(あるいは突きでている)がいるので歯が原因の蓄膿症(副鼻腔炎、上顎洞炎)がおきる場合があります。 こんな感じです。
FAQ子
本当だ、歯の根の先が近いようにみえます。
Dr.島倉
この方の場合、根の先に膿の袋ができていてそれが原因になっています。
FAQ子
この歯性上顎洞炎の場合であれば「歯の治療する→蓄膿症が治る」ということでしょうか?
Dr.島倉
はい、歯の治療をすることにより蓄膿症が治る可能性があります。
症状って?
Dr.島倉
歯が原因の蓄膿症(歯性副鼻腔炎、歯性上顎洞炎)の症状としては、
「上の奥歯の根の先あたりの歯肉がズキズキする」
「目の下のあたりを押すと痛い(鼻の穴の位置)」
「体の上下の振動が響く(膿が溜まっているので)」
「片側だけが痛い(両方痛い場合は鼻の影響)」
以上のような症状があります。
治療方法は?
FAQ子
わかりました。この方の場合はどうやって治すのですか?抜歯とか...
Dr.島倉
ちょっとまって下さい、判断を急ぎすぎてはいけません。 もちろん「抜歯」という選択肢もあります。 その前にまず「なぜ根の先に膿の袋ができたか」を解明しなければなりません。
FAQ子
??
Dr.島倉
歯の根の先に膿の袋があることは間違いないのですが、根の治療(根管治療、歯内療法)により膿の袋が無くなることがあります。その場合は歯を抜かずに蓄膿症が治るケースもあります。
FAQ子
なるほど、 そもそもの蓄膿症の原因がなくなれば歯を抜かなくても良いということですね。
Dr.島倉
そうです。 ただし歯の根が割れ(破折)などが原因で膿の袋ができた場合は残念ながら膿の袋と同時に「抜歯」して取り除くことになります。
FAQ子
根の治療で膿の袋がなくなれば残せるが、割れていた場合は抜歯になる。
Dr.島倉
その通りです。
FAQ子
それはどうすればわかるのですか??
Dr.島倉
はい、いろいろな視点から確認します。以下あげますと
①レントゲン2種類(パントモといって大きいタイプとデンタルといって小さいタイプ)
②歯周ポケット検査(割れている場合に変化します)
③CT(3次元断層撮影)
④顕微鏡検査(肉眼では見えなかった割れが確認できることがあります)
⑤根の治療をしっかりおこなう(割れてないことが確認できた場合)
回数はかかりますが、以上のようなステップが必要になります。
FAQ子
さっそく、歯の根の治療すれば蓄膿症も治って歯も残せるかもって教えてあげなきゃ
Dr.島倉
ただ注意が1つ。 膿の袋がある場合、治療の成功率は60~70%(海外のデータ)です。 それも歯の根の治療を専門におこなっている歯科医師(顕微鏡、ラバーダム防湿、など使用)でも100%ではないのでその辺はキチンと伝えてあげて下さい。
FAQ子
わかりました。 じゃあ100%を希望する場合はどうなるのでしょうか?
Dr.島倉
100%を目指すと残念ですが「抜歯」になります。歯だけが原因だった場合に限りますが。
FAQ子
6~7割の成功率であれば根の治療をしたほうが良さそうですね。
Dr.島倉
時間はかかりますが賢明な選択だと思います。
まとめ
・歯が原因の蓄膿症を「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)という。
・歯の根の内部の汚れが原因の場合は根の治療により蓄膿症が治る可能性がある。
・歯の根が割れている場合は抜歯の可能性がある。
≪補足≫
※上顎洞とは4つある副鼻腔(顔の骨にある空洞のこと:前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形骨洞がある)のうちの一つで上の奥歯の根の先に最も近い。