直接的ではありませんが歯の病気が皮膚の病気に関与する場合があります。なぜ歯の治療をすると皮膚の病気が治るのか?その「答え」を解説いたします。
目次
歯の病気が関与する皮膚病があります
歯の病気(根尖病巣、歯周病、など)が間接的に波及し、皮膚に症状(湿疹がでる、赤くなる、膿疱ができる、腫れる)がでてくる皮膚の病気があります。
代表的なものとして、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、肉芽腫性口唇炎(にくげしゅせいこうしんえん)、金属アレルギー、などがあります。
そのうちの代表的な皮膚の病気の一つが掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)になります。いったいどんな病気なのでしょうか?
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは?
掌蹠膿疱症の患者さんは日本国内で13万6千人ほどいると推測され、女性に多く(男女比およそ1:2)発症年齢は平均で55、5歳とされています。
膿疱(水ぶくれ)の中には細菌やウィルスはなどは入っていないため直接触れても人に感染することはありません。
症状
手のひら(手掌)や足の裏(足蹠)に、膿がたまった「膿疱(のうほう)」が数多くできる皮膚の病気です。
爪にも症状がでることがあり、爪の変形が起きたり爪がはがれてくることもあります。
また、合併症としては「掌蹠膿疱症性骨関節炎(しょうせきのうほうせいこつかんせつえん)」といい首の付け根、腰、手足に痛みをともなう骨関節炎を合併することが報告されています。
原因
7割は不明ですが、2~3割は根尖病巣、歯周病、扁桃炎、金属アレルギー、とされています。
8割の方が喫煙者のデータがあります。
歯科領域では
①根尖性歯周炎(根の先の膿の袋)
②歯周病(中度以上)
③智歯周囲炎(親知らずの周りの歯ぐきの炎症)
が関与されていると言われおり、60%が歯科治療をおこなって改善したというデータがあります。
治療法
皮膚科領域では、ステロイド剤の塗布などをおこないます。
歯科領域(歯の治療)では歯の根の治療、歯周病(歯槽膿漏)の治療、抜歯、金属アレルギーが疑われる場合は金属の除去、などをおこないます。
耳鼻科領域(のどや鼻の治療)では扁桃の摘出、副鼻腔炎の治療、などをおこないます。
禁煙(受動喫煙も避ける)されることが推奨されます。
歯の治療が必要な理由
掌蹠膿疱症の原因の2~3割は歯、鼻、のど、などの病気や金属アレルギー、であることがわかっています。もし歯の病気があり、間接的な原因の可能性が考えられる場合は歯の治療をおこなうことで良くなることが期待できす。
ただし、歯の治療を開始してもすぐに効果が出るわけではなく、改善効果がでてくるまで歯周病の場合で6ヶ月以上、歯の根の治療(根管治療、歯内療法)の場合で1年ほどかかることがあります。
まとめ
・掌蹠膿疱症の間接的な原因として根尖病巣、歯周病(歯槽膿漏)、金属アレルギー、がある。
・歯の病気があり、関係が疑われる場合は歯の治療(根管治療、歯周病治療、抜歯)が必要になる。
・金属アレルギーが原因と疑われるようであればその金属を除去する必要がある。
≪参考≫
・日本歯科医師会雑誌 2019 VOL71 NO.11
・公益社団法人 日本皮膚科学会HP
・掌蹠膿疱症ハンドブック ヤンセンファーマ株式会社 大鵬薬品工業株式会社
・湯島 Regional Collaboration Seminar ~PPP~ 2024年9月19日 東京ガーデンパレス