良く差し歯(被せもの、冠、クラウン)についての種類や値段に関してのご質問を頂戴することがあります。その「答え」を解説いたします。
目次
そもそも差し歯とは?
「差し歯(さしば)」は専門用語で「歯冠継続歯(しかんけいぞくし)、ポストクラウン」といいます。具体的なイメージは次の画像のようになります。
天然の歯は
①目で見える歯の頭の部分(歯冠、しかん)
②目で見えない歯の根の部分(歯根、しこん)
があり、差し歯は①の歯の頭の部分が虫歯などで無くなった場合に、②の歯の根の部分に土台(コア)を入れて(差し込み)、その上に歯(冠、クラウン)を被せる人工の歯をいいます。
差し歯の種類と特徴
差し歯の種類は大きくわけると冠の部分で5つ、土台部分で3つあり、組合せは5×3=15通りあります。
※歯の状況や組合せにより、保険適応or保険外(自費治療)の適応に分かれるため詳しくはかかりつけの先生にご相談されると良いと思います。
①プラスチック系2つ(保険内)
白いプラスチックを使用して白い歯をつくります。さらに分けると以下の種類があります。
(種類1)硬質レジン前装冠 (素材:プラスチック+金属)
(種類2)硬質レジンジャケット冠 (素材:プラスチック単体)
②セラミックス系3つ(保険外)
天然歯に一番近い素材のセラミックス(陶材)で白い歯をつくります。3つの種類があります。
(種類3)メタルボンドクラウン (素材:セラミックス+金属)
(種類4)オールセラミックスクラウン (素材:キャスタブルセラミックス)
(種類5)オールセラミックスクラウン (素材:セラミックス+ジルコニア)
以上のように前歯の差し歯の種類は大きく分けると2つ、細かく分けると5つになります。オールセラミックスクラウンは陶材の種類(ジルコニア、キャスタブルセラミックス)で2つに分かれます。
土台の部分の種類
歯の根の部分の土台の種類は3つあります。
①メタルコア (素材 : 金属)
長所:強度が最大で土台部分が折れることは少ない。
短所:歯の根の質より硬く、製作するために歯を大きめに削る必要があるため、歯の根の方が割れるリスクが他と比較すると大きい。また、金属を使用するため歯ぐき色が暗くなる傾向がある。金属アレルギーがある方には不向き。
②レジンコア (素材 : 主にプラスチック)
長所:歯の質をなるべく温存でき、白い色のため歯ぐきの色に影響しにくい。
短所:金属製よりも強度が小さい。
③ファイバーコア(素材 : グラスファイバー+プラスチック)
長所:歯の質をなるべく温存でき、歯の根の硬さに1番近いため、歯の根が割れるリスクを少なくできます。また色も白いため、歯ぐきの色に影響しにくい。
短所:金属製よりも強度が小さい。
※保険制度の規定より、土台が保険適応or保険外(自費治療)になるかは、最終的にお入れする冠によって変わります。詳しくはかかりつけの先生にご相談されると良いと思います。
どこが違うか?
見た目の違い(審美性)
※上画像は透明感のテスト:裏側から光を当てている
同じ白い歯でも、プラスチック系であると天然の歯のような透き通る「透明感」が表現できないため、少し人工物感がでてしまいます。天然の歯と見分けがつかないようなレベルを求める場合はセラミックス系の方が有利になります。
もちの違い(耐久性)
※上画像は着色のテスト:染色液に5分間漬け→10秒間水洗したあとの比較実験
白い部分の耐久性を比較すると、プラスチック系は吸水性があるため、水分と一緒に色素も吸い込む特性があるため徐々に色が変わってきます。セラミックス系は吸水性がないため時間が経っても色が変わりません。
プラスチックの食器は使っているうちに少し黄ばんできますが、せともの(陶器)は何年経っても色が変わらないことと同じ理由になります。
硬さに冠してもセラミックスは水晶と同じくらいの硬さがあるため磨耗しにくく簡単には削れてきません。プラスチックは歯(エナメル質)の硬さの1/10程度なので摩耗が早く、もちろん奥歯には使用できません。
【参考】
素材の硬さ(モース硬度)について
・ダイヤモンド :モース硬度10(存在する物質で最大の硬さ)
・セラミックス :モース硬度 8(ジルコニア)
・エナメル質 :モース硬度 7 (天然の歯)
・水晶 :モース硬度 7
・プラスチック系 :エナメル質の1/10の硬さ(かなりやわらかい)
差し歯の値段(費用、価格)
気になる差し歯(セラミックス系、保険外)の値段ですが、差し歯1本(土台込みの費用かは不明)の都内であると地域にもよりますが9~12万円位が多いと思われます。
どれが自分に合っているのか?
差し歯の費用をなるべく抑えたい場合はプラスチック系の差し歯を選択する場合が多く、前歯なので見た目や耐久性を優先したい場合はセラミックス系(保険外)の差し歯にすることが多くなります。
また、金属アレルギーがある方は、金属を使用しないタイプを選択すると良いと考えらえます。
まとめ
・差し歯の種類は大きく「プラスチック系」「セラミックス系」の2つに分かれる。
・見た目が良く、長持ちするものは「セラミックス系」だが値段に関しての短所(保険外)がある。
・金属アレルギーがある方は、金属を使用しない差し歯を選択する必要がある。
・どれにするかの選択基準は、自分が一番優先したい部分で決めると良い。