歯周病(歯槽膿漏)で痩せて無くなってしまった歯ぐきの骨を再生する治療法を歯周組織再生療法(再生治療)といい歯周外科治療の一つになります。
歯周病で歯ぐきの骨が溶け、支えが無くなると歯は「グラグラ」してきて最終的には抜けてしまいます。無くなった骨を増やすことができれば歯を残せる可能性が高くなります。
歯ぐきの骨を再生させ、増やす治療法とはいったいどんなものがあるのでしょうか?
その歯を残すための再生治療の「答え」を解説いたします。
目次
すべてはフラップ手術の延長線上の治療になる
すべての再生治療は歯周外科治療の「フラップ手術」にプラスされておこないます。
歯周病の治療は大きく分けて次の2つがあります。
①歯周基本治療(歯周病の原因を取り除き、炎症を改善させる)
②歯周外科治療 (歯周基本治療で改善しなかった部位におこなう)
フラップ手術は②の歯周外科治療の一つで重度の歯周病に対しておこないます。手術なので切開~閉じて(縫合、縫う)おこないます。
ここで大切な点は、治療の順序になり①⇒②の順番になります(②⇒①は医学的に不可)。
「まず、しっかり歯周病の原因を取り除く⇒その後に、必要がある部位のみ手術」
が鉄則になります。
①骨移植
フラップ手術で歯石やプラークを取り除いた後に①人工の骨②ご自身の骨(自家骨)、を骨が無くなった部分にお入れして閉じる方法です。②のご自身の骨の場合は、治療する歯の周りから骨を採取して利用します。
①の人工骨はハイドロキシアパタイト、β-リン酸カルシウム、バイオス、等があります。
※バイオスは牛の骨由来。スイスで開発され20年以上の歴史がある。米国など海外での主流の材料。
※ハイドロキシアパタイト、β‐リン酸カルシウム、は人工的に合成したもの。
②GTR(ジーティーアール)法
1982年に発表された治療方法。フラップ手術で歯石やプラークを取り除いた歯の根の表面に特殊な薄い膜で覆い、閉じます。膜の内側に骨をつくる細胞が増えるためのスペース(隙間)をつくり、歯ぐきの骨の再生を促します。
使用する膜は①テフロン製の吸収しないタイプ(非吸収性膜)②コラーゲン等でできた吸収されるタイプ(吸収性膜)、の2種類あります。
※2013年にテフロン製は製造終了、現時点では吸収性のみ使用可能。
※吸収性膜は、動物由来のコラーゲン、乳酸+グリコール酸、等がある。
③エムドゲイン
1995年にスウェーデンで発売され、日本では1998年より使用されています。アメロジェニンというたんぱく質が有効成分で、歯のできる過程の研究から生まれた歯周組織再生用材料です。フラップ手術で歯石やプラークを取り除いた歯の根の表面に、エムドゲイン(液体)を塗布して閉じます。おこなってから半年以上経過した後に歯ぐきの検査やレントゲン撮影ををおこない効果を確認します。
※世界200万人以上の治療時実績。ブタの歯胚組織を利用、20年間副作用の報告は無い。
④リグロス
2016年12月から使用可能になった世界初の歯周組織再生医薬品(薬としては世界初)。一般名は「トラフェルミン」といい遺伝子組み換えのヒト成長因子の一つです。特に血管を新生するスピードが早くなるため骨をつくる細胞への栄養をしっかり送ることができ、骨の再生を促します。リグロスと同じ成分は火傷の治療など医科の分野でも応用されています。
フラップ手術で歯石やプラークを取り除いた歯の根の表面に、リグロス(液体)を塗布して閉じます。おこなってから半年以上経過した後に歯ぐきの検査やレントゲン撮影ををおこない効果を確認します。
文献上の比較ですが、骨の再生する量は
リグロス > エムドゲイン > GTR法 となり、
最新の治療法になるほど効果が大きくなってきていますが、実際はお口の中の状況は個人によって違うため、どの方法を選択するかは担当の歯科医師との相談が必要です。
※リグロスは日本国内のみの認可で、海外ではまだ認可申請中(2017年時点)であるため、歴史と実績ではエムドゲインの方が勝る。
※リグロスは国内文献のみ。
どういう方に適しているか?
日頃のお手入れが良くできている方
歯周病の原因はプラーク(歯垢、細菌)です。日頃のお手入れが習慣になっていないと、手術後に細菌の感染(傷口から細菌が入る)がおきるため、手術前より悪くなる場合があります。
歯周基本治療が終了している人
再生治療は歯周病で無くなった骨の再生(骨の量を増やす)を目的とし、歯周病の原因や炎症の改善(病気の治療)を目的にしてません。そのため、歯周病の原因を取り除いたり、炎症の改善を目的にする歯周基本治療が終了してからおこないます。
そもそも、病気の原因がそのままでは、骨は再生することはありません。
治療後も継続管理(定期検診)に通える方
せっかくできた歯ぐきの骨です。再び歯周病で失わないためにも治療後も継続管理(定期検診、等)が必ず必要になります。通常3~4ヶ月ごとにクリニックでチェックとクリーニングを継続します。
無くなった骨の形が「クサビ形状(細くて深い)」のタイプ
再生治療には「適応症(てきおうしょう)」といって、応用できる範囲(場所や状態)が決められています(すべてに可能な訳ではない)。
骨が無い形が、レントゲンでみて「歯の根に沿ったクサビ形状」が骨の再生には適してます。
適応症以外におこなっても骨は再生しないか、成功率が下がります。
こういう方には適していない
喫煙される方
喫煙される方は歯周外科治療は禁忌(してはいけない)です。治療後の治りが悪いため、治療前より悪化する可能性が大きくなります。
お手入れが三日坊主に終わってしまう方
お手入れのレベルが維持できていないと、「再びプラークが付きはじめる⇒歯周病の再発⇒骨が無くなる」のサイクルがはじまり、せっかくできた骨も無くなる可能性がでてきます。
基本的な歯周病治療が終わっていない方
再生治療は「歯周病を治す治療」ではなく「歯周病で無くなった骨を再生する(ボリュームを増やす治療)」です。歯周病そのものに対する治療は「歯周基本治療」になりますのでお間違いないように。
痛い時だけ通院する方
歯周病治療のゴールは継続的な管理(定期検診、など)になります。治療が終了して痛くなるまで来ないパターンになってしまうと「痛い=歯周病の再発=せっかく再生した骨が無くなる」ことになりますのでご注意を。
歯ぐきの無くなった形が全体的に「平ら」のタイプ
いくら骨が再生できるようになったと言っても、再生の見込みが無い場合もあります。「骨が広い範囲で平らに無くなっている」場合は、人工骨や薬が定着しないため再生の可能性はありません。
良く頂くご質問
痛みはあるのか?
外科手術になりますので、2~3日はお痛みが出る可能性があります。痛み止めのお薬でコントロールしていきます。1週間ほどは手術をおこなった場所は安静にし清潔に保つことが必要です。
必ず骨ができるのか?
もちろん、必ず(100%)できる訳ではありません。歯周病基本治療が終了し、再生治療の適応症(骨ができる見込みがどの程度あるか)かどうか担当の先生の判断を仰ぎます。
どの位骨ができるのか?
文献上の平均で 1.5㎜~3㎜ ほどの骨添加(骨の再生)がレントゲンで確認されています。(無くなった骨の50~60%の再生、100%再生する訳ではない)
まとめ
・再生治療は無くなった骨を再生はさせるが、「歯周病そのもの」を治す治療ではない。
(歯周病そのものを治す治療⇒歯周基本治療)
・再生治療は歯周基本治療が終了してからおこなうことが鉄則。
・適応症がある(可能なタイプが限定される、魔法の薬ではない)。
・再生した骨も再び無くなる可能性(歯周病の再発)があるので油断しない。
・すぐに骨はできない(半年以上は待つ)。
・再生する骨の量は50~60%(治療法と状況で異なる)が目安。
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