海外(先進国)で歯の根の治療(根管治療)をした場合、日本の治療費とどのくらい差があるのでしょうか?その「答え」を解説いたします。
目次
はじめにお読みください
・データが古いことをご了承ください(傾向は同じです)。
・治療費は歯の根の治療開始~終了までのもの(冠は含まない)です。
・治療費は2000年時の加重平均値。
・日本円で計算。為替レートは2002年前半の基準外国為替相場および裁定外国為替相場。
結論:海外は費用がかかる
結論的には、
一番高額なのは米国の108,011円
一番低額なのは日本の 5,839円
となり、米国の専門医で根の治療をした場合日本の20倍ほどかかります。
米国がもちろん世界第一位の経済大国なので納得できますが、かつて世界第二位の経済大国と言われた日本の治療費が余りにも低い事実はあまり知られていません。
この差は比較対象が米国だからでしょうか?
欧米先進国と日本の治療費の比較(2000年)
念のため、海外の先進国(欧米)の歯の根の治療費を比較してみると以下の通りです。
米国 :108,011円
イギリス: 92,220円
カナダ : 52,764円
フランス: 43,920円
日本 : 5,839円
他の先進国と比較しても日本は極端に低い治療費であることがわかります。
欧米先進国と日本の治療費の比較(2019年)
最新(2019年)のデータをグラフ化してみました。先進国での奥歯の根の治療費を比較してみました。
もちろん2000年時と比べると物価の上昇があるので全体的に治療費は上昇しています。
また、最新の使用機器や材料(歯科用顕微鏡、歯科用CT、ニッケルチタンファイル、MTAセメント、など)の導入など治療技術の進歩の影響もあると考えられます。
なぜか?
それは、日本では国が決めた全国一律の治療費(健康保険制度、1961年制定)になっているためです。
2019年の今でこそ、日本でも歯の根の治療を保険外(自由診療)でおこなうクリニック様も存在しますが、過去国内では保険内の根の治療しか存在しない時代が長く続き、また、国の財政難より制度発足から医療費(医科、歯科、薬、含む)の上昇が抑えられていることが大きな要因になります。
米国では健康保険の制度自体がないため、歯科医師がベストな治療方法と材料を選択し、十分な治療時間を確保しておこなう事ができるため、その成果に見合った報酬を設定しています。
また、米国は訴訟が多いお国柄でもあるため、しっかり治療して良い結果(成功させる)をだす必要性が背景にあります。
結果としては、歯の根の治療(神経をお取りした場合)の成功率に関しては米国では90~95%、日本では45~70%とのデータがあり、日本では根の治療の再治療(膿の袋ができるためにおこなう)が多い傾向があります。
もちろん、日本でも高い水準の治療することはできますが、保険外でおこなうことが多く治療費も欧米先進国と同じ位になります。
まとめ
・先進国の中で歯の根の治療費は米国が一番高く、日本が一番低い。
・残念ながら根の治療の成功率は日本より欧米先進国の方が高い。
・私見ではあるが、各国の医療制度の影響が大きいと思われる。
≪参考≫
「医療技術評再評価提案書」 特定非営利活動法人 日本歯科保存学会 2019年
「歯科医療再生のストラテジー」川渕孝一2004年
「2000年 社会医療診療行為別調査」厚労省